キャンプを始めると、次々に新しい道具が欲しくなります。
SNSや動画を見れば、便利そうなものや格好いいものが次から次へと流れてくる。自分が持っている道具より、新しく発売された道具の方が使いやすそうに見えることもあります。
実のところ、私自身も一時期は新しいキャンプ道具をかなり追いかけていました。
SNSで新商品の情報をチェックし、近隣の店舗に入荷したと分かれば実物を見に行く。必要かどうかを落ち着いて考えるより、「とにかく手に入れたい」という気持ちが先に立っていた時期です。
その一つが、当時話題になっていたツーバーナーのガスコンロでした。
見た目はスマートで、持ち運びもしやすそう。人気もあり、何より格好よく見えました。
ただ、よく考えてみれば、私のキャンプでは一人分の料理を作ることがほとんどです。二口のバーナーを同時に使う場面など、そうそうありません。
当然ながら、実際にキャンプへ持っていった回数も数えるほどでした。
ツーバーナーが悪かったわけではありません。
単純に、私のキャンプスタイルには必要なかったのです。
その一方で、買ってから何年も使い続けている道具もあります。
その違いは、価格や性能だけではありません。何度も使い、手入れをし、ときには使い方を変えながら、自分のキャンプに馴染ませられたかどうかにある気がします。
キャンプの楽しみは、道具を増やすことだけではありません。
今ある道具との付き合い方を深めていく。その過程にも、キャンプ道具ならではの面白さがあります。
今回は、キャンプ道具を買った後の付き合い方について、「道具を育てる」という視点から考えてみます。
キャンプ道具は買って終わりではない
キャンプ道具は、買った瞬間に自分の道具になるわけではありません。
店頭で実物を見たり、インターネットで細かく調べたりしても、本当に自分に合っているかは分からないものです。
実際にキャンプへ持っていき、何度か使ってみて初めて、
- どこに置くと使いやすいか
- どう収納すると持ち運びやすいか
- どの道具と組み合わせると便利か
- 反対に、どの機能は使わないのか
- 何を追加すると使いやすくなるのか
といったことが分かってきます。
購入はゴールというより、その道具を知るためのスタートです。
私にとって、その分かりやすい例がメスティンでした。
数年前のキャンプブームでは、ソロキャンプやキャンプ料理の盛り上がりとともに、メスティンもかなり注目されていました。
私が覚えている限りでは、トランギア製のメスティンを店頭でなかなか見つけられない時期もあり、さまざまなメーカーから似た商品が登場しました。やがて100円ショップでも販売されるようになり、一気に身近なキャンプ道具になった印象があります。
私自身、メスティン料理の本まで買い、掲載されていた料理を真似して作ったこともあります。
とはいえ、メスティンはもともと四角い飯盒です。
お米を炊くだけでも、道具としての役割は十分に果たせます。
ただ、私が今もメスティンを使っている理由は、炊飯以外にも使い道を広げられたからだと思います。
メスティンには、その後さまざまな周辺道具が登場しました。
- 蒸し料理に使える網
- 中に収まるバットやトレー
- ふた代わりにもなるまな板
- 革製のハンドルカバー
- 持ち運び用の収納ケース
こうしたものを組み合わせると、ただの飯盒だったメスティンが、自分の使い方に合った小さな調理セットへと変わっていきます。
私も最初はノーブランドのメスティンを使い、その後トランギア製を手に入れました。
収納ケースや革製のハンドルカバー、蒸し網、メスティンに収まる鉄板なども買っています。
ちなみに鉄板は、ほとんど使いませんでした。重かったんですよね。
今では鉄板を外し、メスティンの中にアルコールストーブやナイフなどを収納して、小さな調理道具セットとして使っています。
必要だと思ったものを足して、使わなかったものは外す。
買ったときの形を守るのではなく、自分が使いやすい形に変えていく。これも「道具を育てる」ということなのだと思います。
「道具を育てる」とはどういうことか
ここでいう「道具を育てる」とは、傷や色の変化を楽しむことだけではありません。
手入れをして長く使うこと。
自分に合った使い方を見つけること。
必要なら手を加えること。
そして、今の道具で本当に困っているのかを考えてから、次の道具を選ぶこと。
そうした付き合い方を、この記事では「育てる」と呼ぶことにします。
手入れをして長く使う
道具を育てると聞くと、本格的なメンテナンスや修理を思い浮かべるかもしれません。
しかし、最初から難しいことをする必要はありません。
- 使用後に汚れを落とす
- 濡れたものをきちんと乾かす
- 収納前に破損がないか確認する
- 緩んだ部品があれば締め直す
- 湿気の少ない場所に保管する
まずはこの程度でも十分です。
例えばメスティンなら、キャンプ場で簡単に汚れを落として終わりにせず、帰宅後にもう一度洗い、水分を拭き取ってから収納します。
本当に当たり前のことです。
ただ、帰宅後は疲れていますし、荷物の片付けもあります。「また今度でいいか」と後回しにしたくなることもあります。
それでも、この地味なひと手間が道具の状態を左右します。
手入れというより、次のキャンプですぐ使える状態に戻しておく。私はそのくらいの感覚で考えています。
自分に合った使い方を見つける
同じ道具でも、使う人によって合う使い方は違います。
説明書どおりに使うことが、必ずしも自分にとっての正解とは限りません。
私の場合、その例の一つがオピネルナイフです。
オピネルには刃の材質やサイズ、ハンドルに使われる木材など、さまざまな種類があります。
価格も比較的手が届きやすく、「もう一本くらい」と思わせてくる困ったナイフでもあります。
私も何本か試し、現在はステンレス刃のモデルを使っています。
以前はカーボン刃のモデルも持っていました。
カーボン刃は、手入れをしながら変化を楽しむという点では、いかにも「育てる道具」らしい素材です。
私も黒錆加工、いわゆる魔剣化を試し、しばらく使っていました。
ただ、水分が残れば錆びやすく、切れ味を保つには自分で研ぐ必要もあります。
素材として魅力はあるのですが、私には少し手がかかりすぎました。
気がつけば、手入れが楽なステンレス刃の方ばかり使うようになっていました。
ここで分かったのは、手間のかかる道具ほど長く使えるわけではないということです。
自分の性格や使い方に合っていて、無理なく扱えること。その方が、結果として出番は増えます。
現在使っているオピネルは、ハンドルにウォルナット材が使われたものです。
いくつかの木材を実際に手に取り、色や手触りを比べて選びました。使ううちに色の深みも増している、ような気がします。
さらに、長く使う中でハンドルを自分の握りやすい形に削りました。
買ったばかりの頃は、きれいな木製ハンドルを削るなど恐ろしくてできませんでした。
ただ、何度も使っているうちに、「ここを少し削れば、もっと握りやすいのでは」と思うようになりました。
失敗すれば元には戻せません。
慎重に少しずつ削り、今では自分の手に合った形になっています。
買ったままの姿ではありませんが、だからこそ愛着があります。
道具に自分を合わせ続けるのではなく、自分の使い方に合わせて道具を変えていく。それも長く使うための方法です。
むやみに買い替えない
新しいキャンプ道具を見ると、今持っているものより便利そうに見えます。
もちろん、新しい道具を買うこと自体は悪くありません。
私も新しい道具を見るのは好きですし、欲しくなることもあります。
ただ、新商品が出るたびに買い替えていては、今ある道具を十分に知る前に、次の道具へ移ることになります。
そこで、買う前に一度だけ考えます。
- 今の道具で、実際に何に困っているのか
- 使い方を変えれば解決できないか
- その不便は、買い替えるほど頻繁に起きるのか
- 新しい道具を買ったあと、本当に使い続けるのか
ここがはっきりしなければ、しばらく今の道具を使ってみる。
反対に、毎回同じところで困るなら、それは買い替えを考える理由になります。
「新しいから買う」ではなく、「今の道具では解決できないことがあるから買う」。
この違いは、倉庫番になる道具を増やさないためにも大きいと思います。
以前の記事「キャンプ道具を買ったのに使わなくなる理由|「倉庫の住人」になる原因」
傷や変色も、その道具の姿になる
キャンプ道具は、使えば傷がつき、汚れや変色も増えていきます。
新品の状態を保つことだけを考えれば、それらは劣化に見えるかもしれません。
ただ、使い込んだ姿が格好よく見える道具もあります。
私が使っているファイヤーサイドのグランマーコッパーケトルも、その一つです。
購入したばかりの頃は銅の輝きがきれいで、焚き火の中へ入れるには少し勇気がいりました。
薪ストーブの上などで使い、銅の色がゆっくり変わっていく様子を楽しむ使い方もあります。
一方、焚き火台へ直接入れれば、煤で黒くなり、薪と擦れて傷もつきます。
どちらにするか、かなり迷いました。
ただ、私がこのケトルに惹かれた理由の一つは、焚き火台にぶら下げたり、炎の中へ入れたりして使う姿でした。
それなら、きれいなまま飾っておくより、実際にやってみようと思ったのです。
今では全体が真っ黒です。
けれど、この黒さがいい。
使い込んできた感じがあり、新品の頃とは別の格好よさがあります。
新品の状態を守り続けることだけが、道具を大切にする方法ではありません。
本来使いたかった方法で使い、その結果として残った変化を楽しむ。
そんな付き合い方もあっていいと思います。
道具を使い込むと、次に必要なものが分かる
今ある道具を何度も使っていると、自分のキャンプに何が必要なのかが以前より分かるようになります。
使っているチェアに特に不満がなければ、似たようなチェアをもう一脚買う必要はないかもしれません。
反対に、毎回同じ部分で不便を感じるなら、次に選ぶべき道具の条件が見えてきます。
例えば、
- もう少し軽いものがいい
- 収納サイズを小さくしたい
- 設営にかかる時間を減らしたい
- 手入れが簡単な素材にしたい
といった具合です。
メスティン用の鉄板を買ったものの、重くて使わなくなった経験も、完全な無駄だったとは思っていません。
少なくとも、私が調理道具を選ぶうえでは「持ち運びやすさ」が重要だと分かりました。
使わなかった道具からも、次に選ぶための条件は見つかります。
今ある道具を使い込むことは、ただ同じものを使い続けることではありません。
自分に必要なものと、そうでないものを見分ける練習にもなります。
次の道具を検討するときは、以前紹介した「キャンプ道具を買う前の2ステップ|情報収集とスタイル確認で後悔を減らす」と合わせて考えると、流行や勢いだけで選びにくくなります。
まずは一つの道具から始めればいい
持っている道具をすべて完璧に手入れし、自分仕様に変えようとすると、それ自体が負担になります。
最初は、よく使っている道具を一つ選ぶだけで十分です。
チェアでも、クッカーでも、ランタンでも構いません。
キャンプから帰ったら、
- 汚れを落とす
- 十分に乾かす
- 壊れている部分がないか確認する
- 次に使うとき、変えたいことを一つ考える
まずはこれだけです。
収納場所を少し変える。
一緒に使うものを同じ袋にまとめる。
使っていない付属品を外す。
そんな小さな変更でも、次のキャンプでは使いやすくなることがあります。
最初から専門的な知識や高度な加工技術は必要ありません。
何度か使い、「自分はここが気になる」と分かってから手を加える方が、失敗も少なくなります。
買い替えることが悪いわけではない
長く使うことは大切ですが、壊れた道具や自分に合わない道具まで、無理に使い続ける必要はありません。
次のような場合は、買い替えたり手放したりすることも選択肢になります。
- 安全性に不安がある
- 修理が難しい
- 修理費用が高い
- キャンプスタイルが変わった
- サイズや重さが合わなくなった
- 長期間使っていない
- 別の道具で十分に代用できる
私がカーボン刃のオピネルよりステンレス刃を使うようになったのも、カーボン刃が悪かったからではありません。
私にはステンレス刃の方が扱いやすく、結果として出番が多かったからです。
買い替えないことが正解なのではなく、なぜ替えるのかが分かっていることの方が重要です。
理由がはっきりした買い替えなら、それは失敗ではありません。
今のキャンプスタイルに合わせて、道具を選び直したということです。
新しい道具を買うか迷ったときは、「キャンプ道具を買うべきタイミング|後悔しない3つの判断基準」も参考にしてみてください。
まとめ|今ある道具との付き合い方を育てよう
キャンプ道具を育てるというと、大がかりな修理や加工を想像するかもしれません。
けれど、実際にはもっと小さなことの積み重ねです。
- 使った後に汚れを落とす
- 自分に合う収納方法を探す
- 必要なら周辺道具を追加する
- 使わなかったものは外す
- 自分に合うように手を加える
- 買い替える前に、今の不満を整理する
こうして何度も使っているうちに、店頭で見たときには分からなかった、その道具の良さや欠点が見えてきます。
新しい道具を探すことも、キャンプの楽しみです。
ただ、次の道具を買う前に、今持っているものをもう一度使ってみたり、イメージしてみる。
そのうえで、まだやっぱり困ることがあるなら、新しい道具を考えればいいと思います。
道具を増やすだけでなく、今ある道具を自分のキャンプに馴染ませていく。
それもキャンプを再設計する方法の一つなのだと思っています。

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